公益信託大成建設自然・歴史環境基金
平成24年度 助成活動・研究報告書

はじめに

 特定非営利法人 街・建築・文化再生集団(以下NPO法人RAC)では、本助成金を基にベトナム人建築技能者を日本に招聘し、茨城県桜川市真壁町の東日本大震災で被災した歴史的建造物において現場研修を行う事を予定していた。しかし大学を卒業していない技能者に対するVISA取得手続き上の問題や真壁町の歴史的建造物の修復状況等から、将来に建築技能者を来日させることを目標とし、その足がかりとして技能者の管理者となり得る建築技術者を招聘し、日本の歴史的建造物修復技術についての研修を行うこととした。今回研修を受けた建築技術者が管理者となり、ベトナム人建築技能者数名を修復チームとして日本に呼ぶことで当初の計画である「ベトナム人研修生は日本の技術を学び、日本の歴史的建造物の所有者は職人を確保出来る」という両者、ひいては両国に利益を生み出すモデルの完成を最終目的とする。

 今回の研修では主に「ベトナムで既にキャリアを積んでいる建築技術者が日本の建築技術を学ぶ」ことを目的とした。ベトナム現地の建設会社や設計事務所を通じ研修生を応募した上で、NPO法人RAC担当者がベトナム現地で面接を行い、現在のキャリアや日本建築・文化に対する興味、他文化への順応性等を基準として選抜を行った。

 研修生として採用されたのはTran Van Vu氏(以下Vu氏)である。Vu氏はベトナム・ダナン大学を卒業後インフラ企業に勤務した後に転職、現在は建築設計会社Sing Artに技術者として在籍している。本プロジェクトの発案者である後藤教授の所属する学校法人 工学院大学とダナン大学が友好協定を結んでおり、Sing Artの代表はダナン大学学長のご子息であること等からVu氏の今後の日本での活躍への期待を込め、研修生としての採用が決まった。実際にSing Artは日本の木造建築会社の図面作成等の仕事をアウトソーシングとして手掛けている。Vu氏が今回の研修を受けることで日本の技術を学びベトナムへ帰国する事は現在のVu氏の業務にも直接的な好影響を及ぼすであろうと予想されたことも今回の採用へと繋がる一要因となった。

 Vu氏は海外での生活経験が無く、また使用可能な言語はベトナム語のみであったため、日常生活及び現場研修においては特別な配慮が必要とされた。対策として、Vu氏の日本滞在中はNPO法人RACの担当者が同居しサポートにあたった。現地の視察や各現場研修の初日には通訳者を同行させることを基本とし、現場での注意や安全管理上必要な情報がVu氏に伝達漏れの無いよう配慮した。

 研修の内容としては大きく現地視察と現場研修の2つに分かれ、現地視察では特に都内の文化財建造物や関東近辺の伝統的建造群保存地区、歴史的な町並みが残る地域を訪ねた。現場研修では有限会社岩瀬建築に御協力頂き、岩瀬建築で手掛ける各地の物件に数日ずつ滞在し、主に野帳作成を行った。また未来設計株式会社及び株式会社細田工務店にも研修の御協力頂き、ショールーム視察や建設現場の視察を行った。